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EPMツール概要

※この記事は、株式会社リックテレコムより発刊されている 「月刊ソリューションIT」 No.177 2003年12月号 に掲載されたものです。

※無断複製、転載を禁じます。

特集:Special Issuee プロマネの限界をEPMで越える!

プロジェクト、PMO、経営層をつなぎ全社最適を支援するEPM ツール

IT&E EPM事業部長 加藤亨

EPMの実践には、プロジェクトのナレッジを収集・蓄積し、 稼働状況を可視化するためのツールが必要不可欠だ。

IT エンジニアリングビジネスソリューション本部長兼 EPM 事業部長の加藤亨氏が、EPM ツールの機能や アーキテクチャを解説する。


EPM の実践で注意すべき点として、経営コンサルタントのポール・C・ディンズモア氏は、著書「Winning in Business with Enterprise Project Management」(邦訳「エンタープライズ・プロジェクトマネジメント」)の中で、次のような3 原則を挙げている。

(1)標準化・共有化の原則
首尾一貫したプロジェクトマネジメント手法は、組織全体で理解され共有されなくてはならない。

(2)プロジェクトマネジメント・オフィス(PMO)設置の原則
全社を管轄する「プロジェクト事務局」を設置し、個々のプロジェクトに対する側面支援機能を充実させる必要がある。

(3)全社最適管理優先の原則
経営トップの機能や利益を保証するため、EPM 支援ツールは全社最適の視点から選択されなければならない。

これらの原則は、EPM の導入企業が注意すべきポイントを掲げ、EPM を実践する中で起きる課題に対処するための指針をまとめたものだ。

また、EPM を実現する上では、ITの活用が必須だ。ツールの支援がなければ、これらの原則を実践するのは容易ではない。

そこで以下では、EPM 支援ツールが、これらの3 原則をどのように実現するのかを、機能とアーキテクチャの観点から解説する。

組織ぐるみで活用は必須 (1)標準化・共有化のための機能

首尾一貫したプロジェクトマネジメント手法を組織全体で共有するには、それらを標準化・テンプレート化し、ナレッジDB によって一元管理する必要がある。「テンプレート登録」「ナレッジDB」が標準化・共有化原則のための必須機能となる。

最近のプロジェクトマネジメントツールには、単にアクティビティをWBS のテンプレートとするだけでなく、アクティビティの期間や必要なリソースを、プロジェクトの規模によって、何段階かに分けて登録できる機能も搭載されている。

また、プロジェクトのカテゴリごとに、テンプレートを何種類も登録できたり、テンプレートの一部をコンポ―ネント化して登録。計画を策定する際にどのテンプレートやコンポーネントを利用するか、手順に沿って操作することで、計画を容易に策定できるツールもある。

この機能を使えば、経験の少ないプロジェクトマネージャでも、規模やスコープを選択するだけで、短時間でプロジェクト計画を策定できる。人的なリソース計画を作成する場合にも、標準化されたデータの山積みを適用することで、精度の高い見積りが可能となる。結果、組織の成熟度を高める効果が期待できる。

プロジェクト動向を可視化する (2)PMO 支援機能

全社を管轄するPMO を設置する企業が、最近増えている。 PMO の果たすべき役割は個々の企業によって異なるが、一般的には以下の機能で構成される。これらの支援がEPM ツールに求められるわけだ(図参照)。

[ 図 PMOの役割とツールの関係 ]

●マネジメントレポート機能
プロジェクトの状況報告を、時間をかけて月次レポートにまとめていては、変化に対応できない。 EPM 支援ツールには、個別プロジェクトの管理情報を、そのままマネジメントレポートとしてサマリする機能が必要となる。

●プロジェクト業務支援機能
個別プロジェクトの日常的な管理や、定期的なレポート作成を支援する機能。各種レポートのテンプレートや実行予算、工数実績、コスト実績、要員の負荷状況といった管理情報を、プロジェクトの要求に応じて、リアルタイムに提供できなくてはならない。

●リスクモニタ機能
管理項目ごとに、あらかじめしきい値を設定しておき、これを越えた時に警告を発する機能を持ったプロジェクトマネジメントツールが登場している。たとえば、実行予算と実績の差の上限と下限を設定。実行予算がこれを大幅に上回った際に、自動的にアラームを発するとともに、マネジメントへリスクとしてレポートする。これによってリスク発生状況のリアルタイムなモニタリングが可能となる。

●ナレッジマネジメント機能
過去のプロジェクトの教訓や実績データなどを集中管理。必要に応じて検索することで、課題解決のアイデアや実績スライド積算の資料の共有といった「レッスン・ラーンド」を実現する。

●プロジェクトポータル機能
個別プロジェクトのメンバーが、確実に標準手順に沿ってプロジェクトを遂行することは重要だ。これは、EPMの観点からも同様だ。 EPM では、個別プロジェクトの実績入力が、そのままマネジメントへのレポートとなったり、リスクモニタのトリガーとなるからだ。そこで、個別プロジェクトのメンバーがいつ何を実施すべきかを、常に画面上でナビゲートし、必要情報を一覧できなくてはならない。プロジェクトポータルは、EPM の効果を保証する影の主役と言える。

EIP(Enterprise Information Portal)ツールをカスタマイズしてこの機能を作成するケースもあるが、最近では、基本機能として備えるプロジェクトマネジメント支援ツールもでてきた(画面参照)。

[ 画面 プロジェクトポータル ]

経営層へ情報を提供 (3)全社最適管理機能

全社最適管理のために、経営トップに対して情報を提供する機能は最も重要と言える。具体的には「マネジメントダッシュボード」「ポートフォリオマネジメント」「アーンドバリューマネジメント」などが挙げられる。

●マネジメントダッシュボード
経営トップが、自社のプロジェクトのすべてを押さえるには、プロジェクト状況を一覧表示し、時々刻々の変化をリアルタイムにモニタできなくてはならない。また、個々のプロジェクトのリスク状況や、しきい値管理によるアラートなどを表示。課題発生時には、個別プロジェクトの詳細情報まで遡り、確認できなくてはならない。こうした機能は、一般的に「マネジメントダッシュボード」や「エグゼクティブダッシュボード」などと呼ばれており、最近のプロジェクトマネジメントツールでは一般的になりつつある。

●ポートフォリオマネジメント
プロジェクトポートフォリオマネジメントは、プロジェクトの相対的な位置関係を2 次元グラフ上に表現し、プロジェクトの取捨選択と優先順位を決める手法だ。たとえば横軸に「収益性」、縦軸に「技術的な成功確率」をとる。そしてプロジェクトのリスクと収益性の関係を(1)ローリスクローリターン、(2)ローリスクハイリターン、(3)ハイリスクハイリターン、(4)ハイリスクローリターンの4 つの象限に分けて把握。「どのプロジェクトにリソースを集中するか」といった意思決定に役立てる。

● EVM(Earned Value Management)
プロジェクトのスコープとコスト、スケジュールを統合管理する手法。EVMで基本的に使われるのは、以下の3つの価値だ。

1)PV(Planned Value:計画価値):予算はいくらで終了している予定だったか?

2)EV(Earned Value):完了した作業の予算上の価値はいくらか?

3)AC(Actual Cost:実コスト):実際に発生したコストはいくらだったか?

EV に対する計画価値や実コストの差額を求めることで、「プロジェクトが予定どおり進んでいるのか」「予算が超過していないか」を、ひとつのグラフで同時に把握できる。

EVM は個別プロジェクトマネジメントの手法として広く知られている。EPM においても、各プロジェクトのスコープやコスト、スケジュールを統合管理し、状況を大きく掴む指標として活用される。

最近のPMS では、EVM を標準的に備えているソフトが増えている。

マルチWBS 管理が必須

EPM を実践するには、プロジェクトを企業戦略のベクトルに合致させる仕掛けが必要となる。そのため、EPM支援ツールは、少なくとも以下のようなアーキテクチャを備えなければならない。

(1)統合DB・データ連携
同時並行で進められる複数のプロジェクトを管理し、経営目的を達成するには、プロジェクトのコスト情報やリソース情報、スケジュール情報が統合されるだけでなく、会計情報も連携できなくてはならない。

従ってEPM 支援ツールは、全社のプロジェクトを統合管理できるスケーラビリティと、それに耐えられるパフォーマンスを持った統合DB を備える必要がある。また、企業の会計情報を扱うERP システムと連携して運用できるアーキテクチャが必須だ。

(2)マルチWBS 管理
プロジェクトは通常、WBS を柱に管理される。WBS とは、プロジェクト全体のスコープを体系的にまとめたもので、プロジェクトそのものを指すとも言われる。だがEPM を実践するには、切り口とした管理だけではなく、組織の構成単位やドキュメントの構成要素とWBS を連携させて管理しなくてはならない。また、エンジニアのスキル分類別のリソース状況を把握する必要もある。

プロジェクトを複数の視点から柔軟に眺めることで、全社レベルのリソースの稼動状況やプロジェクトの最適な組み合わせを選択でき、企業戦略とプロジェクトの整合性を保てるのだ。 EPM 支援ツールには、企業レベルで複数のブレークダウン構成を定義でき、組織軸やエンジニアスキル軸、ERP 開発やWeb 開発といったプロジェクト種別軸など、ビューを自由に切り替えて参照する機能が求められる。こうした機能は、プラントエンジニアリング研究において、「インテリジェントWBS」として紹介されている。

EPM は、導入してすぐに実践できる管理手法ではない。実績を積み上げながら、段階的に成熟度を高めていく必要がある。

EPM 支援ツールが充実してきたことで、EPM の導入環境は整いつつある。変化対応力を向上させ、企業の収益性を高めるため、EPM の導入プロジェクトを立ち上げるべき時期に来ていると言える。

<参考文献>

・ポール・C・ディンスモア
「エンタープライズプロジェクトマネジメント」ダイヤモンド社

・デビッド・マギー
「ターンアラウンド」東洋経済

・プロジェクトマネジメント導入開発調査委員会
「プロジェクト&プログラムマネジメント標準ガイドブック」

・エンジニアリング振興協会
「平成12年度わが国エンジニアリング企業の国際競争力強化に関する調査研究報告書(6)エンジニアリング業の目指すコラボレーション環境の研究」

※この記事は、株式会社リックテレコムより発刊されている 「月刊ソリューションIT」 No.177 2003年12月号 に掲載されたものです。

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